2006年11月28日

玄侑宗久「アブラクサスの祭」

アブラクサスの祭

ユニークだ、というと、きっと語弊があると思うけど、
こんな設定、すぐには思いつかないだろう。

「分裂症まじりの躁鬱病」の患者であるお坊さん。
それがこの本の主人公。
さらに彼はロックを愛し、音楽が彼の精神の支柱になっている。

だが読み進めると、ユニークだという考えは消え、
宗教も音楽も同じ「精神」から発していると気づく。
主人公・浄念の思考は筋が通っており、だからこそ浄念の病気を知らない人々には「ちょっと変わった優しいお坊さん」で通ってしまう。

浄念自身の独白スタイル部分は、だから何も違和感がない。
彼の頭の中では全てが整理されているのだ。
それが周りの人から見るとどうだろう。
妻の多恵の視点、元々は同僚であった玄宗の視点、その妻の視点。
浄念を観察し、ともに生活する彼らの視点は正直で、浄念によって当たり前のように語られていた部分の別の側面を描き出し、それによってようやく彼が「分裂症まじりの躁鬱病」だと読んでいる側は実感する。

いろいろな角度から見る人物評は、それだけで面白いもの。
同じ人間がこんなに違うものかと思う一方、こんなに多角的なのかとも感心する。

実際には知らないので分からないが、調べてみると、
「分裂症まじりの躁鬱病」の症状がとてもリアルに描かれているらしい。
人の心に踏み込んで実感するような魅力、この本にはあふれている。
posted by 参 at 00:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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