
なーんか見覚えのあるタイトルだと思ったら朝日新聞の新聞小説だったそうな。
購読していながら読まなかったのは本当にもったいなかった。
高卒46歳、ノンキャリアからデパートの課長職にまで上り詰めた椿山。
念願のマイホームと美しい妻、聡明な息子。
だが、正念場とも言える売出しのその日に突然死してしまう…。
浅田次郎と言えば「オヤジギャグが好き(確かこんな書き方…)」「だけど、最近まじめな文章ばかり書きすぎて昔からの読者はしっくりきてないんじゃないかなぁ〜(みたいなこと)」と語るインタビュー記事を以前読んだ記憶がある。
当時「鉄道員」が涙を誘う名作として映画化されていた。
確かにこの小説にはオヤジギャグ的オモシロフレーズが織り込まれていて、それが作品全体の「シリアスなのにほんわか」な雰囲気をかもし出している気がする。
不思議な創造物、シリアスな一面、感動的な言葉。
「フッ」と笑ってしまったり「じわっ」と涙が出ていたり。
腹が立つような出来事も、なぜか許している椿山。
その心中が違和感なく感じられる。
死者はすべてを達観するものなのか?いや、そういう意味ではなくて、心の底からその気持ちが「分かる」。
同じ立場ならきっとそう感じるだろう、と。
何よりこの小説はその設定がなんとも面白い。
お役所仕事に初七日の発想、すべてこれ、日本的な設定だなー。
その愉快さの中に、感動も深刻も詰め込んで、かなり美味しく仕上げられている。お薦め。
その他のレビューはこちらにも。
Amazonで購入