2005年11月01日

朝倉祐弥「白の咆哮」



作家の名前にも題名にも聞き覚えがあったからこの本を借りて帰ったのだが、1ページ目を読んで、なんとなく受け入れがたい印象を覚えた。
それもそのはず。
この前まで読んでいたのが「浅田次郎」で、ここ数年間、頭をフル回転させないと読み進めないような小説は意識的に避けていたから。
リハビリのつもりでまず最終ページをめくり、作者のプロフィールを見ることにした。
「1977年生まれ 和歌山県出身」
と、年下?
そうか。
とりあえず、読んでみよう。

北陸地方で発生した<土踊り>が暗鬱な冬を迎えた日本を席巻していく中、九州の山奥でそれと相反する意思を持ち、自給自足生活を行う「入植者たち」。
<交渉者>である「わたし」の視点からその発生と伝播、<入植地>と<土踊り>のだどる道が描かれる。

確かに最初は受け入れがたいような、こちらを身構えさせるようなモノを感じ、読むのをためらいもしたのだが、それと同時に得体の知れない勢いにページをめくらされるような迫力も感じた。
「わたし」の独白スタイルで進むストーリーは、ともすれば停滞しがち、飽きられがちだと思うが、文章力と独自の世界観がそうはさせない。

小説を読むとき、話の軸と軸をつなぐ装飾部分…物語の展開とは一見無関係のような形容部分…を読み飛ばす癖のある私だが、これほどまでに一語一句をしっかりと目を見開いて読んだのは初めてだと思う。
なんというか…この小説に描かれる<土踊り>同様の、うっとりするような力が文章にも宿っているような気さえした。
それは<土踊り>という言葉から感じる不気味な、日本的、宗教的、おどろおどろしく、生々しい響きと、それを感じてみたい…「怖いもの見たさ」のような感覚かもしれない。

実際には今存在していないものと自覚しているのに、この世界の確固たる存在感。
言葉を自分のものにして自在に操り、「これぞ小説」というものを読ませてもらった。

第二十八回すばる文学賞受賞作。
すげーな、年下なのに…(関係ないか、関係ないね)

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posted by 参 at 07:55| Comment(0) | TrackBack(1) | 朝倉祐弥 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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