2005年11月26日

池澤夏樹「花を運ぶ妹」

花を運ぶ妹

パリに留学し、海外へのコーディネーターの仕事をしている妹「カヲル」と、イラストレーターで画家を志す兄「哲夫」。
過去から現在へと時を追って、2人のストーリーが交互に紡がれていく。やがてそれが1つの話(麻薬で逮捕された兄とそれを救おうと奔走する妹…)へと繋がっていく。

「アジアは合わない」とぼやく妹も「ここがいい」とのめりこんで破滅し、再生していく兄も、結局はこの土地、「バリ」の得体の知れない渦に巻き込まれていく。
行ったことのない私にも、魅力、魔物、泥のような渦巻き、そんなものが感じられる。
しかしそれは決して「陰」なものではなく、とても明るい。

池澤夏樹さんの本は初めて読んだが(っていうか、ほとんど初めての本ばかり借りてきてるんだけど)文章の美しさに細部まで読みたくなる作家だと思った。
文字をこねくり回しているだけの、まだるっこい小説が多い中で(私には向いていないだけだと思いますが)、適切な形容と、その美しさが一文一文にあふれている。

重ねて取材の緻密さと奥深い知識が、ストーリーをどっしりと支えているから面白い。
「白い咆哮」の時にも「これぞ作家」と書いたが、池澤さんの場合はもっと余裕がある「これぞ作家」。たぶんどの作品を読んでも面白いだろう。

アジアで外国人が麻薬を使い(所持し)逮捕される話、昔の話ではない。
今でも「誤認逮捕」を訴えている収監者が確かいたはずだ(オーストラリアかどこかに)。
映画「ブロークダウン・パレス」のような例もある(といいつつ、見ていないが…)。
その現実を知るという点でも興味深い。
さらに、兄・哲夫の画家の視点、画家論議も魅力。

その他のレビューはこちらにも。
posted by 参 at 09:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 池澤夏樹 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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