2006年11月28日

玄侑宗久「アブラクサスの祭」

アブラクサスの祭

ユニークだ、というと、きっと語弊があると思うけど、
こんな設定、すぐには思いつかないだろう。

「分裂症まじりの躁鬱病」の患者であるお坊さん。
それがこの本の主人公。
さらに彼はロックを愛し、音楽が彼の精神の支柱になっている。

だが読み進めると、ユニークだという考えは消え、
宗教も音楽も同じ「精神」から発していると気づく。
主人公・浄念の思考は筋が通っており、だからこそ浄念の病気を知らない人々には「ちょっと変わった優しいお坊さん」で通ってしまう。

浄念自身の独白スタイル部分は、だから何も違和感がない。
彼の頭の中では全てが整理されているのだ。
それが周りの人から見るとどうだろう。
妻の多恵の視点、元々は同僚であった玄宗の視点、その妻の視点。
浄念を観察し、ともに生活する彼らの視点は正直で、浄念によって当たり前のように語られていた部分の別の側面を描き出し、それによってようやく彼が「分裂症まじりの躁鬱病」だと読んでいる側は実感する。

いろいろな角度から見る人物評は、それだけで面白いもの。
同じ人間がこんなに違うものかと思う一方、こんなに多角的なのかとも感心する。

実際には知らないので分からないが、調べてみると、
「分裂症まじりの躁鬱病」の症状がとてもリアルに描かれているらしい。
人の心に踏み込んで実感するような魅力、この本にはあふれている。
posted by 参 at 00:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月09日

北村薫「ターン」

ターン
4101373221北村 薫

新潮社 2000-06
売り上げランキング : 67138

おすすめ平均star
star子どもの頃に抱いた想像
star大人の御伽噺!
star美味しい読書タイムが味わえる

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


上のAmazon.co.jpでの評価、感想とは少し違う感触を受けたが、それはよい意味で。

舞台設定はなかなかシリアスだ。
主人公は交通事故にあって、日常と違う時空間に飛ばされてしまう。
誰もいない、何も起きない、何も分からない。

そういった深刻なシュチュエーションにありながら、
とても優しい筆致がその雰囲気を和らげる。
読者を深刻に追い詰めてしまわない、そこに好感が持てる。

現実的だけど夢のよう、
夢のようだけど現実的。

2つの世界をつなぐ1本の線を通して、もうとっくに立派な大人であるはずの主人公の内面の成長があったり、葛藤があったり。
とても人間くさい部分もあり・・・ただそれが全てどこか自分にある部分だったりして、応援したくなる。
一緒にその謎をときたくなる。

問いかける声と、問いに答える主人公、という書き方も新鮮。

映画化もされています。

ターン 特別版
ターン 特別版平山秀幸 牧瀬里穂 中村勘太郎


おすすめ平均 star
star永遠に終わらないものなんて、やっぱりないんです!!
star地味だけど、よい作品です
star牧瀬里穂の魅力全開
star原作とは別の良さがある
starファンタジーでもSFでもなくホラー

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


牧瀬里穂、イメージそのままだと思います。
あの少しトガったような声も、喋り方も。
小説から想像してしまいました。

posted by 参 at 23:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 北村薫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月02日

金原ひとみ「蛇にピアス」

蛇にピアス
蛇にピアス金原 ひとみ


おすすめ平均 star
star唐辛子の辛さのような
star可もなく不可もなく
starピンときません。
starスプリットタンですかぁ・・
star普遍的なもの。

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


ドラッグや刺青やアルコール。

自分を傷めつける行為を積極的に肯定する環境。
時に、そうした環境を舞台にした小説に、
「美化してる」
と反発を覚えるわたし。

「蛇にピアス」は冒頭からいきなり「スプリットタン」とくる。
ピアスを舌につけ、徐々にその穴を広げていく。
最終的に、舌の先の部分と穴を糸で縛り、蛇の舌のように2つに分ける。

狂気の沙汰。
気持ち悪い。
そしてそれに憧れる主人公ルイにどうも感情移入できない。
読み進めるかどうか一瞬迷った。

だけどこの作家がすごい才能の持ち主なんだということは、読み進めるにつれ感じられる。
内容はどんどん暗い方向へと走って、過激になっていくが、それに慣れたわけでもないのに嫌な感じはしなくなる。

終盤、ルイが、その彼氏(のような存在)の「アマ」を思う様子を描かれる場面では、急速に揺れ動く気持ちを実感として感じる。
なんだ?
いきなり、この乙女な感情は。

「美化してる」
と感じたのは最初の最初だけで、
この部分では、この過激な環境にいる彼女と、普通に社会人や主婦してる私たち(読者)が完全に繋がって感じられる気がする。

好き嫌いはそれぞれ。
評価も分かれるだろう。

だけど、★をつけるとしたら、私は結構いい点をつけると思う。

第130回芥川賞受賞作。
posted by 参 at 12:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 金原ひとみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月17日

東野圭吾「白夜行」

白夜行
白夜行東野 圭吾

集英社 2002-05
売り上げランキング : 8,253

おすすめ平均 star
star決して判りえない人間の心の闇の部分、
star凄いですね。
star圧倒的なボリュームの小説

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


好きです、この本。
すごいですね、東野圭吾氏。
どんな脳みそなのか覗いて見たい。
どれだけのストーリーを平行して考えられるんだろう。
どれだけの人間の心理を描写できるんだろう。
どれだけの人間になりきれるんだろう…と考えてしまいました。

ドラマで少しだけ見て、なんとなくの雰囲気は掴んでいたのですが、ドラマよりももっとリアルで生々しい(映像化できないだろうけど、ドラマじゃ)。
しかし、登場人物2人はハマり役と言えるのではないでしょうか。
特に綾瀬はるかさんは、イメージどおりでした。
…ドラマ→本、の順に読んだんですけどね、はい。

「人間」が形成される時期に、ある部分が欠落してしまった(欠落させられてしまった)2人の主人公。
長い年月をかけ、「人間」について深く描いている、ドラマの部分もいいです。
東野氏の本は、謎解きだけじゃない。
謎解きもものすごくて、ドラマも深い。
posted by 参 at 20:58| Comment(0) | TrackBack(2) | 東野圭吾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

内田春菊「いつの日か旅に出よう」

いつの日か旅に出よういつの日か旅に出よう
内田 春菊

中央公論新社 2003-07-08
売り上げランキング : 310,762
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


へぇ〜。
この本の読者感想評価が低いの(Amazonの)ってすごく意外。
確かに、想像力と創造力がありすぎて、最初はついていけなかったけど、だんだん内田ワールドにハマればなんか突拍子がなくて面白かった、というのが私の感想なのですが。

まともに読もうとせずに、暇で他に読む本がなくて、なんか読みたい、そんな時に読んでみたらぁ〜?
と、なんかダラッと言いたくなる本。

私って失礼かしら。

こんな風に思うのは、前に読んだのが大江健三郎氏だから?

かもね。
posted by 参 at 20:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

大江健三郎「二百年の子供」

二百年の子供二百年の子供
大江 健三郎

中央公論新社 2003-11-26
売り上げランキング : 287,293
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


やっぱ大江健三郎ぐらいは読んどかな!
と思って借りたこの本。
大江健三郎氏本人いわく「私の唯一のファンタジー」。
これぞ、という本を読みたかったのに、またもや外してしまいました(選ぶ基準的に)。

内容はというと、優等生的な文体で教科書を読んでいるような気持ちに…。
でも、子供には読ませたいかな。
タイムスリップをするのだけど、その先の過去の話や描き方は他では読んだことがなかったし、昔話のような感覚も受けました。
未来へのタイムスリップは蛇足に感じましたが…。

きっと氏も子供に読んで欲しかったのでは?と思ってたら新聞小説でした。
ははは。
posted by 参 at 20:45| Comment(1) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月22日

宮島茂樹「不肖・宮嶋 青春記」

不肖・宮嶋青春記不肖・宮嶋青春記
宮嶋 茂樹

ワック 2005-03
売り上げランキング : 23,307
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools



不肖・宮嶋ファンであります。
写真展に行ってご本人にお会いしながら、サインをいただけなかった悔しい思い出もあります。
そんなこんなで、結構、不肖の本は読んでいるのですが、その美味しいとこどり+若かりし不肖の撮影した写真、といったところですね。
以前に読んだことのあるエピソードだらけですが、別に嫌な感じもなく、再び笑えました。

この本はやっぱ、学生時代の作品(課題?)や、高校の写真部時代に撮った写真が見れるのがいいですね。
ただのガチンコで突破、みたいなカメラマンじゃなく(スミマセン)、ちゃんと基礎を勉強してああいう写真があるんだなぁ、みたいな失礼な関心の仕方をしてしまいました。

いつまでも、「生きて」「撮って」「笑わせて」ほしいですね〜。
久々に読んだ不肖の本は、やっぱり面白かった。
posted by 参 at 12:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 宮嶋茂樹 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月21日

江宮隆之「一葉の雲」

一葉の雲一葉の雲
江宮 隆之

河出書房新社 1998-05
売り上げランキング : 916,478

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


女流作家「樋口一葉」の一生を、「甲府」との関わりを意識させながら書いた伝記風の小説。
作者、江宮隆之さんの故郷甲府への強い思い、樋口一葉への強い思いが、ガンガン伝わってくる文章は、読んでいて嫌なものではありませんが、ちょっと特徴的。
私自身、関西に住んでいながら「福岡、福岡」とことあるごとに言うので、人のことは言えませんが、何かそういうのに通じるものを感じます。
一葉自身は甲府に行ったことがない、というのが通説のようですが、作者は想像力と取材で「一葉は甲府に行っているはずだ」という説を立て、小説中にもそのシーンを登場させているほど。
とにかく「甲府LOVE」な小説です。続きを読む
posted by 参 at 16:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 江宮隆之 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月08日

東野圭吾「分身」

分身分身
東野 圭吾

集英社 1996-09
売り上げランキング : 5,922
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


「分身」では「クローン人間」がテーマ。
突飛とも思える設定だけれど、引き込まれる。
主人公が女性だからだろうか。
いつものように、東野作品特有の「悲しみ」も感じたが、それでも素直に面白く、また読みたいと思える作品。
今までは「悲しみ」が勝って辛くなって読み終えていたのですが、この作品のラストは未来にへの広がりを予感させるプラスのベクトルを感じます。

解説によると、理系出身の東野さんはこうした先端医学の問題をいくつかの作品で取り上げているとか。
読んでみようと思います。

posted by 参 at 16:03| Comment(1) | TrackBack(2) | 東野圭吾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

東野圭吾「魔球」

魔球魔球
東野 圭吾

講談社 1991-06
売り上げランキング : 3,434
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


面白いのだけど、せつない。やるせない。
「容疑者Xの献身」が初東野圭吾作品だった私ですが、あの作品に引き続き、同じ感想と言うか読後感があります。
なんとなく、こう、コワイというか…。

「これからどうなるんだろう」という、ドキドキハラハラ感でページをめくらされている、というよりも、「あ〜、なんだか分からないけど次読まないと…」という焦燥感…。

正直、東野作品は怖いです。
不安で悲しい。

なんだか感想にならない感想でした。
posted by 参 at 15:48| Comment(0) | TrackBack(1) | 東野圭吾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。